富山えごまの座談会が
新しいえごまの可能性の
種まきに。
富山のえごまの魅力を、
もっと知ってもらうにはどうしたらいいのか。
「富山市えごま6次産業化推進グループ」には、えごまへの熱い思いを持つ人たちがたくさんいます。
今回は、県産えごまを使ってカレースパイスやレトルトカレーを開発した石﨑さん、えごまの試験栽培から収穫、搾油を経てえごまオイルを完成させた田中さん、えごまの葉や種の栽培から加工、販売まで6次産業化に取り組む株式会社健菜堂の村元さん、自宅でカフェをオープンしえごま料理を中心とした体に優しい料理を提供する佐々倉さん、えごまの特産化に力を注ぐ富山市職員の塚本さん・八倉巻さんに集まっていただき、座談会を開催。
和気あいあいとした雰囲気の中、えごまの魅力や可能性、今後の展開などを自由に語っていただきました。
えごまの葉がいつでも
手に入るのは富山だけ
佐々倉さん
「今日は、えごまジュース、えごま茶、えごまおにぎりなどを持参したので、皆さんぜひ。包んでいるのはもちろんえごまの葉、そして昆布のおにぎりの中にはえごまの葉を使ったえごま味噌がはいっています。健菜堂さんのえごまの葉を使っています」
塚本さん
「抜群においしいです。えごまの葉のクセが強くないから、おにぎりに合いますね。えごまの仕事をしているとどうしてもえごまを主役にしたくなりますが、葉は主役じゃなくてもいいのかもしれません」
田中さん
「大沢野地区には、家庭ごとにえごま味噌のレシピがあります。また、富山の伝統料理でいえば、『なんばころがし』というものがあり、南砺市の浄土真宗の報恩講の中で提供される精進料理のひとつで、蒸した里芋にえごま味噌を転がしてつける料理なんです」
佐々倉さん
「日本エゴマ協会の服部代表が言うには、えごまの葉が一年中あるのは富山だけなんですって。健菜堂さんの植物工場での水耕栽培はありがたいですよね。『他県は、冬場に葉を使いたくても使えないので、富山はもっともっと広められたらいいんじゃない?』と言われました」
●「健菜堂」が1年中えごまの葉を栽培できるのは、温泉熱や太陽光発電、LED照明といった地球にやさしいエネルギー源を利用した室内工場だから。季節や天候に左右されないのが強みです。
受験生のお供に、
えごまおにぎり!?
佐々倉さん
「『合格祈願したえごまの葉をおむすびに巻いて、受験の時に食べる』という田中さんのアイデアをもとに、いろいろ改良したおにぎりも人気があります」
田中さん
「今の新しいアイデアは、富山市にある於保多神社でえごまのタネを合格祈願してもらい、健菜堂さんで葉を栽培して、それを使っておにぎりを作る。そして富山駅で受験生に向けて販売するというものなのですが、いかがでしょう?」
村元さん
「えごまの葉は、タネをまいてから、だいたい6週間ぐらいで収穫しています」
田中さん
「じゃあ、たくさんの受験生に食べてもらえますね!」
八倉巻さん
「合格祈願のように、富山えごまにこれまでにない価値をつけるアイデアはおもしろいですね。緑のえごまパワーで気合もはいりそうです!」
えごまの葉は、
風味がよく、身体にもいい
石﨑さん
「私が最近よく思うのは、富山のお刺身は大葉ではなく、えごまの葉でもいいのではないかと。どちらも香りが良く殺菌効果がありますが、えごまの葉にはロスマリン酸が含まれているから、お刺身の傷みを遅らせ、生臭さを消す働きもあります。なので、健菜堂さんから出荷されている葉を、できれば大葉と同じぐらいの大きさで、同じぐらいの値段で出荷できたらいいのではと」
村元さん
「今日持参した葉は、とても大きいですよね!今は、これよりもうワンサイズ小さいものを、スーパーマーケットに卸しています」
石﨑さん
「えごまの実からできたえごまオイルだけでなく、葉にも捨てがたいものがありますよね」
田中さん
「大葉の食品成分表はありますが、えごまの葉についてはまだ出ていません。ただ、県内の大学でもえごまの葉の研究が進められていますよね」
塚本さん
「富山県の農林水産総合技術センター食品研究所の研究結果でも、高い抗酸化力が確認されたという記事が掲載されていましたね」
●えごまの葉には、ポリフェノールの一種であるロスマリン酸、クロロフィル、ビタミンCなど、強い抗酸化作用をもつとされる成分がたっぷり。また、ロスマリン酸には、抗炎症作用もあり、アレルギー反応を抑える働きがあるともいわれています。
1年中手に入るから、
もっと上手に使いたい
佐々倉さん
「私のカフェでは『えごまの葉を買いたい』というお客様がたくさんいらっしゃるので、葉の販売をしたいと思っているんです。あと、『葉の使い方が分からない』という声も多いので、お客様には富山市が作ったえごまレシピブックをお渡ししています。葉のレシピももっと考えていきたいですね」
塚本さん
「例えば、村元さんが佐々倉さんに卸すのはいいなと思います。スーパーマーケットに葉を卸す時に、レシピを一緒にお渡しするのもいいかもしれませんね」
佐々倉さん
「葉のレシピとして特におすすめなのは、塩釜焼き。他には、生春巻きもよく作ります。生春巻きの皮の上に1枚置いて、あとは巻くだけ。揚げ春巻きは中身に火を通した具材を巻いて表面を揚げるだけでパリッとおいしくなります。健菜堂さんの水耕栽培の葉はとても食べやすいので、『たくさんの具と混じり合っておいしい』と言われますね」
●えごまの葉に興味はあるけど、使い方が分からないというジレンマを克服できるレシピがあります。えごまの葉だけでなく、実や油など、いろいろな活用方法を知るには、このサイトを参考にしてみてください。おかずやごはんもの、おやつなど幅広くご紹介しています。https://toyamaegoma.com/recipe.pdf
まるごと活用して、
環境にやさしい素材へ
石﨑さん
「富山にはいろいろな水産資源がありますが、小さいフクラギやツバイソ、小さくて脂っ気のないサバなどは廃棄されてしまいます。海外ではそういったものをオイル漬けにして食べているように、富山でもオリーブオイルにエゴマオイルを少し混ぜて漬けるとか、えごまで商品に付加価値をつけると面白いのではと思っています」
田中さん
「えごまのエキスを使って、食品シートやパックを抗菌加工できたらいいかもしれませんね」
石﨑さん
「これからの時代には必須になりそうですね。茎も根っこも全部パルプにして、加工の際に出たエキスを染み込ませれば、環境にやさしい素材になるので、罪悪感を持たずに捨てられます。それでお弁当箱を作れば、おかずが傷みにくいという効果もあるかもしれません。あと、使い捨て用の紙皿にえごまの繊維とエキスを入れるのもいいかも」
田中さん
「いいですね!そしたら、えごまの葉の形をした団扇もありえますね?」
石﨑さん
「団扇いいですね! 抗菌の風!」
田中さん
「今、実際に取り組んでいるのは、えごまの葉から抽出したアロマ。韓国の空港に到着したらキムチの香りがするように、富山の玄関口に降り立ったとき、富山のえごまの香りがするようになればいいなと思い、お店の協力を得てアロマオイルを抽出してもらいました。クラリセージに似たいい香りでしたよ。近いうちに成分分析の結果を聞きに行く予定です」
八倉巻さん
「食べるだけではないえごま商品がどんどん展開されていくのが楽しみです!私たち富山市でもサポートしていきたいです。一方で、えごまがどこで売っているのか周知されていないので、例えば「えごまマルシェ」など、みなさんの商品をまとめた売り場づくりができればと思いました!
誰かの発言がヒントになり、いろいろなアイデアが生まれた座談会。例えば、石﨑さんが開発したスパイスを佐々倉さんのお店で扱う、または佐々倉さんが作っているお弁当をマルシェで販売するというような話も出るなど、横のつながりが生まれました。今よりもっとえごまが手に入りやすい環境になるかもしれません。さらには、食の分野以外への進出など、えごまをより多くの人たちに知ってもらうための新たな展開が始まりそうな予感。これからの動きにも目が離せません。
2021年6月実施