富山市えごま6次産業化推進グループの人々を紹介!

話がある、環となる、輪になる。富山えごまの“wa”

「富山えごま」=「おいしくて安全」をめざして
無添加のやくぜんカレーを作る
「アジャンタスパイス」

富山えごまのおいしさを
もっと多くの人たちに知ってもらいたい。


そんな思いを胸に、「富山市えごま6次産業化推進グループ」の副会長として、富山えごまの商品開発に取り組んでいるのが、「アジャンタスパイス」代表の石﨑和生さんです。
1990年から現在に至るまで、スパイス料理研究家としてオーダースパイスの受託生産やミックススパイスの開発製造販売から、スパイスを使った料理のレシピ提供、料理教室の開催などに取り組みながら、カレー店「スパイシーレスト アジャンタ」のオーナーとして料理を提供するなど、幅広い活動を展開しています。スパイスに関する豊富な知識や経験を生かして、富山えごまの新たな魅力を引き出している石﨑さんに、富山えごまとの出会いや取り組み、今後の展望などをお聞きしました。

カレーの縁が、
富山えごまとの出会いに

珍しいスパイスも取り扱っている
珍しいスパイスも取り扱っている

1990年から2013年まで富山大学前にあった「スパイシーレスト アジャンタ」には、根強いファンがたくさんいました。復活の要望に応えて、2020年4月、同店が富山市上冨居にオープン。再び飲食店経営の道を歩み始めた石﨑さんがそもそも同店を創業したのは、初めてインド料理を食べた時にカルチャーショックを受け、スパイスに興味を持ち始めたことがきっかけでした。

「お店を一度閉めた後は、しばらく飲食店経営から距離を置き、もともと並行して取り組んでいたオーダースパイスの受託生産に力を注いでいました。企業のご要望を聞いて、スパイスの調合や作り方、レシピを提供していたんです。また、県内の飲食店から依頼を受けて、スパイスを使った料理レシピの提供や商品開発などにも携わっていました。」

スパイスの道をより深く追求していた石﨑さんが、富山えごまに出会ったのは「スパイシーレスト アジャンタ」がもたらした縁でした。

「富山えごまの栽培を行っている「健菜堂」の石橋社長はアジャンタのファンで、もともと知り合いだったんです。ちょうど「富山市えごま6次産業化推進グループ」が発足したときに、とあるイベントで偶然出会い、グループへの加入を誘われたのが、メンバーになったきっかけです」

グループに加入後、県産えごまを使って最初に作ったのは「とやまエゴマカレースパイス(中辛・辛口)」。えごまの実をそのまま配合してもカレーの風味が損なわれないことが分かり、2016年に商品化に至りました。

「えごまの実は粉砕すると酸化が進むなど、鮮度の高い状態を形にするのが難しい食材ですが、実をそのまま使えば問題ありません。また、市場に出回っている固形のカレールーは油分を豊富に含んでいますが、カレースパイスはその油分を抜いたものなので、消化不良による胸焼けの心配もありません。年配の方も安心して食べられます」

富山えごまは、「畑の魚」と言われるほど栄養価が高く、その葉には抗酸化作用に優れた成分が、その実や油にはアレルギー疾患や生活習慣病の改善が期待できる成分が豊富に含まれています。胸焼けしないカレーづくりができる「とやまエゴマカレースパイス」は、富山えごまの健康なイメージをより高める商品といえるでしょう。

店頭で育てているカレーリーフ
店頭で育てているカレーリーフ

富山えごまが、
身体にやさしいレトルトカレーに

石﨑さんが次に挑戦したのは、市販の「とやまエゴマカレースパイス」に少し手を加えて使用したレトルトカレーでした。商品名は「越中やくぜんエゴマチキンカリー」といいます。

約17種類のスパイスが使われているからか、カレーを作る加工場内にはスパイシーな香りが充満しています。大きな回転釜の中には、約240食分という大量のカレーがゆっくり攪拌されています。その中にクコの実、ミカンの皮、ナツメの実といった3種類の「やくぜん」を投入する石﨑さん。約30〜40分煮込み、出来上がった後はパック詰めをし、栄養成分を損なわないために密閉状態で殺菌し、急冷、袋詰めなどの工程を経て、スーパーマーケットへ持参しているといいます。こうして富山えごまの新しい形が、多くの人々にとって身近な存在になっています。

「えごまが体にいいということはすでに知られていると思うので、栄養成分や効果効能だけをPRするより、葉や種の使い方などえごまをどう生かしていくのかを論議する方が、時代のニーズ的にも大事なのではと思っています。そのうえで、富山にしかない地場野菜を取り入れるなど、富山でしかできない商品を提案していく方がいいのかなと考えています」。

通常、レトルトカレーには、3〜5年という長期にわたって保存できるようにするために添加物が使われています。

「このカリーには、添加物を一切入れていません。味付けは塩、鰹節の粉、昆布の粉のみ。あくまで僕の考え方ですが、富山えごまを使った商品に関してはおいしいのはもちろんのこと、とにかく「食の安全性」を重視したいんです。できるだけ添加物や化学調味料等を使わずに、富山らしさを出せたらいいなと。そこで、「薬都とやま」を象徴するやくぜんをプラスしました。だから、レトルトカレーですが、冷蔵保存で賞味期限が2ヶ月と短めなんですよ」

富山えごまが持つ健康的なイメージに、高い安全性を付加するためにこだわり抜く石﨑さん。実際に試食してみても、スパイスややくぜんの風味が口いっぱいに広がり、余計なものが入っていないことが分かります。おいしさと安全性への思いは、使用している食用油や鶏肉からもうかがえます。

「油は、「ひまわり油」を使用しています。他の油より高価ですが、添加物やアレルギーなどの問題がないんですよ。鶏肉は、カロリーや匂いを抑えながらも、ミカンの香りやナツメの甘みを際立たせるために、湯通しをしてから使っています」

17種のスパイスに加え、3種のやくぜんを投入
17種のスパイスに加え、3種のやくぜんを投入

ロゴマークが、
「おいしくて安全」の印になるように

石﨑さんのイラストもトレードマーク
石﨑さんのイラストもトレードマーク

2018年3月に富山市が公募によって決定した富山えごまのロゴマークは、「富山えごま認定商品」のパッケージに刻まれています。石﨑さんが、富山えごまを用いた商品で認定商品に該当するものは現在、「とやまエゴマカレースパイス中辛」「とやまエゴマカレースパイス辛口」「とやまピクルススパイス」「エバリーフ配合チャイスパイス」など9商品。富山えごまが多彩な風味となって生まれ変わっています。

「手間をかけて良質なものを作り続けることで、富山えごまのマークを見たときに、『おいしさと安全性に配慮された食べ物』と認識していただけるようにしていきたいと思っています。健康の大切さが再認識された今だからこそ、その方向に向かって進んでいきたいですね」

一つひとつを手間暇かけて作り上げるため、富山えごまを使った商品点数を今以上に増やすことは困難だそうですが、食に関する幅広い知識と経験を持つ石﨑さんのもとには、「商品の売り方を一緒に考えてほしい」などさまざまな依頼や相談が届いています。

「これからは、富山えごまをアジャンタ内だけで消化するのではなく、これまで取り組んできたスパイス同様、外部に富山えごまを使った料理の提案をするなど、もっと幅広く関わっていけたらと思っています」

プロフィール

石﨑和生さん

石﨑和生さん
いしざき・かずなり/「アジャンタスパイス」の代表であり、スパイシーレスト「アジャンタ」のオーナー。1963年南砺市生まれ。20歳の時に初めてスパイスに興味を持ち、独学の末、アジャンタチキンカリーを創作。1990年、富山大学前にスパイシーレスト アジャンタを創業。同時にスパイス料理研究家として、スパイス料理の料理講師やアドバイザーを務める。