富山市えごま6次産業化推進グループの人々を紹介!

話がある、環となる、輪になる。富山えごまの“wa”

vol.9 隠れやcaféふぅ 料理研究家 佐々倉 文子さん

えごまの栄養を生かした
料理の提供をもっと。
美味しさと元気を届ける、
えごまソムリエ。

えごまを多くの人に
味わってもらうために。


自宅の敷地内にあるカフェ「隠れやCaféふぅ」で、えごま料理を提供している料理研究家の佐々倉文子さん。えごまの栄養成分や魅力を最大限に生かした料理の数々には、ファンが多数います。イベントなどでは料理だけでなく、えごまにまつわる知識も伝えるなど、活動の幅をどんどん広げています。
「えごまと出会って私自身が変わりました」と話す佐々倉さんに、お店のことやえごまとの出会い、これからの活動や夢についてお聞きしました。また、彼女とコラボレーションをする機会の多いえごま農家の福島恵美さんにもご登場いただきました。

富山えごまキャンペーンが、
心とお店に変化を

佐々倉さんが、「隠れやCaféふぅ」をオープンしたのは2009年8月23日。彼女自身が病気によって食の大切さを痛感したことが、そのきっかけでもあります。

「お店をオープンしてから食の勉強も始め、ナチュラルフードコーディネーターや食生活アドバイザーなどの資格を取得しました。当時は駐車場が2台分ほどしかなかったこともあって、メディアの取材依頼をすべてお断りし、口コミだけの隠れ家として「身体にやさしい料理」を手間隙かけて提供していました。ただ、仕込みが体力的にきついので、10周年でお店を閉めようと思っていたんです」

そんな佐々倉さんに転機が訪れたのは、2018年。富山市では、富山えごまを広めるために、富山市内のレストランなどにえごまの葉・実・油を無償提供するキャンペーンを実施していました。友人である野菜ソムリエ上級プロの田中美弥さんから、そのキャンペーンを聞いたことが、佐々倉さんの気持ちを変えていきます。

よく笑い、よく話す、天真爛漫な佐々倉さん。そんな人柄が、優しい料理に表れている。
よく笑い、よく話す、天真爛漫な佐々倉さん。そんな人柄が、優しい料理に表れている。

「お店をオープンして6年目くらいから、月に1回ゲストを招いて講座を開き、私が料理を提供するという『月1講座』を開催していました。料理のレパートリーを増やしたいと思っていた時に、美弥さんから富山えごまのキャンペーンのことを聞いたんです。さっそく申し込んだら、えごまの葉と実が届きました。この時に作ったのが、私にとっては初めてのえごま料理。これを機会に、その週は毎日えごま料理を提供しまして、お客さんも喜んでくださいました。そのことを美弥さんがSNSに投稿してくださったおかげで、えごま関連のイベントにも声をかけて頂くことが増えていきました。「女性だけのカフェ講座」では、デザートを担当し、えごまを中心にしたデザートを作ることができて、とても楽しかったです。また、「食の王国」イベントでたくさんの方の目の前で、えごま料理を披露できたことも嬉しかったです。」

えごまを料理やデザートに使うたびに、えごまへの思いが募っていく佐々倉さん。10周年を迎えた2019年9月、「隠れやCaféふぅ」はえごま料理をメインとするお店へリニューアルしました。

「えごまをもっと多くの方々に知ってもらうために、お店の在り方を変えたんです。情報発信の頻度を増やし、取材も受けるようになりました。この頃は、えごまをどう料理しているのか、特に農家さんが気になるみたいで、よくお店に来られました。」

えごまが結ぶ、
人との出会い

佐々倉さんは、日本エゴマ普及協会の認定を受けた、えごまソムリエです。えごまソムリエとは、えごまを料理として提供できるよう研究を行う人を指します。

「えごまソムリエは、良質な油と実を見極める目を持ち、えごまに関する知識を蓄えなければいけません。そのために、いろいろなえごまを食べています。例えば、実を食べて油分が少ない原因を特定できることも、えごまソムリエのスキルのひとつなんです」

日本エゴマ普及協会認定の「えごまソムリエ認定証」
日本エゴマ普及協会認定の「えごまソムリエ認定証」

また、生産者と消費者をつなぐ役目として、生産者の方々が生産・加工をした商品を店頭で販売。入善町でえごまの栽培をしている福島恵美さんが作った「えごまの葉っぱのおかずみそ」と「えごま油」も取扱商品のひとつです。
二人が初めて出会ったのは、佐々倉さんが2019年5月に開催した「えごまのイロハ教室」でした。

佐々倉さん
「1回目はえごまの栄養編として、美弥さんを講師にお迎えし、私が料理を担当しました。えごまおむすびをランチとして提供したところ、「えごまのことをもっと知りたい」という声をいただいたので、2回目は栽培編として、えごま農家の福島恵美ちゃんに講師を依頼したんです」

店頭には佐々倉さんが厳選した商品が置かれている。福島さんが作った「えごま油」や「えごまの葉っぱのおかずみそ」が並ぶ。
店頭には佐々倉さんが厳選した商品が置かれている。福島さんが作った「えごま油」や「えごまの葉っぱのおかずみそ」が並ぶ。
ごはんとえごまの実の絶妙なバランス。やさしく握るのがポイント。
ごはんとえごまの実の絶妙なバランス。
やさしく握るのがポイント。
えごまの葉は特製のタレに漬けたもの。おにぎり1個に2枚使います。
えごまの葉は特製のタレに漬けたもの。
おにぎり1個に2枚使います。
えごまの葉で巻いたおにぎりの具は、えごま味噌を。白とろろ昆布のおにぎりは、えごまの実をまぶしたご飯に梅干しを。
えごまの葉で巻いたおにぎりの具は、えごま味噌を。
白とろろ昆布のおにぎりは、えごまの実をまぶしたご飯に梅干しを。

二人はその後、えごまの料理研究家、えごま農家として、テレビや雑誌などで共演。えごまは、人とのつながりも豊かに育んでいます。

佐々倉さん
「骨や筋肉などの機能が低下し、寝たきりなどの危険が高まる状態を、ロコモティブシンドロームというそうです。先日、その病気を予防するためのイベント「ロコケン」がありました。えごまのジュースを試飲で出したいと思ったのですが、ジュースを作るにはえごまの葉が必要。私が富山大学自然観察学習センターで栽培しているものはまだ小さかったので、恵美ちゃんから摘心したばかりのものを分けてもらったんです。無事、ジュースを作ることができました」

福島さん
「えごま栽培を始めて、今年で13年目になります。台風で倒れたり、虫だらけになったりといろいろなことが起きますが、葉がないえごま畑を見た時はあまりのショックに栽培をやめてしまおうかと思いました。ちょうどそんなときに出会いがあり、「えごまの葉っぱのおかずみそ」を商品化することができました。以来、この商品を絶やしたくない!という思いで栽培と加工を続けています。もうやめられなくなった感じですね(笑)」

お店の前で、えごま農家の福島さんと。えごまを通して、人とのつながりが拡がったという。
お店の前で、えごま農家の福島さんと。
えごまを通して、人とのつながりが拡がったという。

えごまへの並々ならぬ愛は
これからもずっと

えごまに魅せられて以来、料理研究家としてレシピ開発をしたり、講座やイベントでデザートを提供したり、えごまソムリエの資格を取得したりと、精力的に活動を展開している佐々倉さん。さまざまな活動と並行しながら、お店では週3日の営業を行っています。ランチとお弁当20食を提供していますが、一つひとつ丁寧に作られているため、仕込みだけで相当な時間を費やしているそうです。

佐々倉さん
「体力的にきつくなってきたので、2023年春頃からえごまソムリエとして新しいことを始めようと思っています。農家の方々の商品を扱うセレクトショップや商品開発、定期的な料理教室を行っていきたいです。お店では、不定期でえごまおむすびとお味噌汁の提供もしていこうかなと考えています。恵美ちゃんにはイベントの講師としてお呼びしたいですし、彼女の農場見学もしたいし、できれば栽培の手伝いもさせてもらいたいと思っています」

福島さん
「えごまの実の収穫は機械ではなく、全部手作業なので、手をお借りできるとありがたいですね。えごまの株を刈り取った後、いくつかを束にしてハウスの中に運び込み、10日ほど乾燥させます。色が変わってきたら棒や板でえごまの株を叩いて実を落としていきます。機械を使うと傷つけてしまう可能性が高く、傷がつくと酸化が始まってしまうので、手作業で叩くという方法をとっているんです」

佐々倉さんのえごま畑見学ツアーで訪れる福島さんの農園。
佐々倉さんのえごま畑見学ツアーで訪れる
福島さんの農園。

佐々倉さん
「収穫などを消費者の方に体験してもらうことで、えごま油の値段がなぜ高いのかが分かっていただけるのではと思っています。えごま畑の体験ツアーの時には、恵美ちゃんにお願いしたいですね」

佐々倉さんの源にあるのは、「えごまの栄養をおいしく届けたい」という大きなえごま愛。自身やお店の在り方を進化させながら、これからもえごまの魅力を発信していきます。

プロフィール

佐々倉文子さん

佐々倉文子さん
ささくら・ふみこ/自宅の敷地内にあるカフェ「隠れやcaféふぅ」を営む料理研究家。開店10周年を迎えた年に、えごま料理をメインとするお店へ方向転換。日本エゴマ協会が主催する、えごまソムリエの資格を取得。お店では、「えごまのイロハ教室」を実施し、富山市えごま6次産業化推進グループの友人と共にえごまのイベントを開催するなど、さまざまな活動を展開している。

福島恵美さん

福島恵美さん
ふくしま・めぐみ/農家・エゴママイスター。エゴマがアレルギー改善に良いことを知り、「自分で作ってしまおう!」と自身で栽培を始める。現在は義父母(福島農園)を手伝いながら、えごまの栽培から加工品製造・販売、えごまの栽培指導など普及活動を行なっている。