富山市えごま6次産業化推進グループの人々を紹介!

話がある、環となる、輪になる。富山えごまの“wa”

vol.5 JAあおば 清凉義昭さん・松田雄二さん

えごまの6次産業化によって、
地域と人を元気にしていく
「JAあおば」

収量を高める栽培方法を確立して、
もっと多くの人が作りたくなる「えごま」へ。


栽培から加工、販売まで、地元で昔から育てられていた「えごま」をよりよく生かして6次産業化に取り組んでいるのが、JAあおばの営農経済部営農指導課に所属する松田雄二さんと、「JAあおば えごま・ごま生産部会」の部会長を務める清凉義昭さんです。JAあおばでは、平成28年4月に「えごま栽培研究会」を発足。お二人とも立ち上げ当初から同研究会に関わり、富山市や富山県と連携して試験栽培を行うとともに、先進地視察や栽培研修会などで知識を蓄積しながら栽培に取り組んでいます。高品質のえごまを作るだけでなく、商品開発も行い、直売所で販売。お二人に6次産業化に取り組むことになった経緯や、今の課題や目標、今後の展望などをお聞きしました。

JAあおばの営農経済部営農指導課に所属する松田雄二さん(左)と、
「JAあおば えごま・ごま生産部会」の部会長を務める清凉義昭さん(右)

地元で作られていたえごまを、
無農薬の特産ブランドへ

JAあおば管内にある大沢野地区の中山間地では、古くからえごまが栽培されています。平成28年に「えごま栽培研究会」を発足したのは、その鳥獣被害の少なさに着目したのがきっかけでした。発足を機に、松田さんは生産者の営農指導や商品開発などに携わることに。一方、清凉さんは、大沢野地区に長く伝わる栽培方法で、初めてえごまの作付けに挑むことになりました。

清凉さん
「えごま栽培研究会は、JAあおば管内の農業振興を目的に、えごまで中山間地の不作付地(休耕地)を解消するために生まれました。栽培は機械化によって、作業にかかる負担を減らし、効率を高めなければ、栽培面積も生産者も増えていかないからです。今は、富山市から苗を植える定植機や収穫機をお借りして、栽培作業の効率化を進めています」

松田さん
「えごまは、その土地固有の在来品種しかありません。それが大沢野地区でも栽培されていたことから、6次産業化によって加工販売の拡大につながり、広く普及していくことになりました。約40名の会員で発足して以来、富山市と富山県と連携しながら、ブランド確立に向けて取り組んでいます」

これまで手作業だったえごま栽培が、同研究会の取り組みによって機械化へ。生産者・栽培面積・出荷量が増加する中、平成30年には「JAあおば えごま・ごま生産部会」を設立しました。

清凉さん
「生産部会を設立したのは、作業の機械化によって、コスト・労働時間の削減を図るだけでなく、収量を向上する栽培技術を確立するためでした。えごまは、どの時期にどう管理をすればいいのか、メカニズムが解明されていません。そのため、栽培方法も確立されていないんです」

松田さん
「機械化にはコストがかかるので、それに見合う収量を確保するための栽培技術の確立が求められます。富山市で行われているえごまのメカニズム研究を栽培に生かせるよう、市と一体となった取り組みを進めていきたいと思っています」

同部会では、栽培方法の確立を模索しながら、ブランド化に必要な付加価値の創造にも取り組んでいます。農薬や化学肥料を一切使用しない無農薬栽培が、まさにその付加価値の一つです。作業効率を高めるだけでなく、品質にも徹底的にこだわっているのです。

松田さん
「えごまは、使用できる農薬が限られているんです。JAあおばでは、それを逆手にとって、“自然の力で育ったえごま”という付加価値をつけ、ブランド力の強化に取り組んでいます」

清凉さん
「健康志向の今、無農薬は多くの方に喜ばれると思いますので、全面に打ち出していきたいなと思っています」

作り手に寄り添いながら、
年々収量アップ

えごま栽培研究会が発足した平成28年と令和2年を比較すると、栽培面積は4.7haから7.8ha、出荷量は1.5tから2.5tへ増加。取り組みの成果が、数字となって現れてきているといえるでしょう。

清凉さん
「えごまの刈り取りは、期間が非常に短く、少しでも遅れると実が落ちてしまいます。また、台風などの天候にも大きく左右されます。今まで10アールあたり30〜40kg程度しか取れませんでしたが、試行錯誤の中でコンバインを改良したところ、私個人の収量は60kg/10a、一番多い人で70kg/10aと、少しずつ良くなってきました」

松田さん
「70kg/10aは収穫できることが分かってきたので、目標は高く設定しながら、なおかつ品質を落とさない取り組みを模索しています」

収量の向上に成果が見られる一方、研究会内のえごまの生産者数は平成28年から30年にかけて年々増加していましたが、高齢化に伴い、令和に入ってからは34名、30名と減少傾向に。しかし、JAあおばには「えごまの取り組みに期待している」という生産者の声が多く寄せられています。

松田さん
「富山県全域では、稲作を中心とした栽培が行われていますが、お米の消費量の減少に伴って出荷量に制限が設けられるため、えごまのような園芸作物に力を入れていかなければなりません。JAあおばとしては、えごまを転作作物としてPRするだけでなく、生産者の方々が安心して作れるような、そしてもっと作りたいと思えるようなものにしていくことが大事だと思っています」

作り手の心と暮らしを大切にするJAあおばの姿勢は、作業の機械化と相まって、収量アップという嬉しい流れを生み出しています。

試験栽培を重ねながら、収量の向上に生産者一体となって取り組む。

みんなが笑顔になる
えごまの輪を

「あおばの里 みのり館」でのえごま加工品コーナー。
「あおばの里 みのり館」でのえごま加工品コーナー。

JAあおばでは、収穫したえごまを実や原料として販売するだけでなく、加工に用いて商品開発を行っています。今は、えごま油、えごまドレッシング、えごまソフトクリーム、えごまあんドーナツを直売所「あおばの里みのり館・ほほえみ館」で販売。1番人気のソフトクリームは、軽く煎ったえごまを粉砕し、えごま油とともに液体に混ぜて作ったもので、さっぱりとしながらも油のコクが効いています。

「あおばの里 みのり館」でのえごま加工品コーナー。
えごまのつぶつぶ食感も楽しい、大人気のえごまあんドーナツ。

松田さん
「平成22〜23年にかけて収穫したえごまを使って初めて販売したのが、非加熱圧搾の生搾りの油です。当時は健康食品としてのえごまの認知度が低く、あまり売れませんでしたが、1〜2年後にえごま油の効能がメディアで取り上げられたのを機に、問い合わせが殺到しまして。今も根強い人気があります」

最近は、新商品の「えごまあんドーナツ」も大人気。その商品開発は、直売担当の水本聡子さんが、米粉あんドーナツを見てひらめき、その生産者に製造委託を依頼しました。えごまの実を煎って擦って生地に練りこんだもので、つぶつぶ食感や香ばしさに加え、手頃な価格が魅力です。

松田さん
「これからは富山えごま独特の風味や食感を生かしたスイーツなど、幅広い層に受け入れられる商品開発に力を入れていきたいです。現在、販売担当者がシフォンケーキとプリンを地元の菓子店と共同開発しています。2021年の春頃に新発売する予定です」

幅広い層に喜ばれる商品を生み出していくためには、品質の良いえごまを安定的に栽培していかなければいけません。

清凉さん
「栽培方法の確立が一番の肝です。私自身、初めて直播きした時の発芽率の低さや、産地の異なる苗の収穫時期のずれなど苦労から始まりましたから、栽培を確立しないと多くの方に作ってもらえないのではと思っています。富山市の研究結果を参考に、えごまを栽培したくなるような環境を作っていきたいですね」

松田さん
「私たちの使命としては、生産者の所得を向上させるために何ができるのかということ。その向上を目指して面積の拡大などに取り組むことで、中山間地の活性化につなげていけたらと思っています。そのためにも、富山市との連携をより強化して、栽培方法の確立、ブランド力の向上を目指していきたいですね。最終的には、消費者も生産者もずっと笑顔でえごまに関わっていけるような取り組みをしていきたいです」

えごまあんドーナツを開発した直売担当の水本さん。今後もえごまを使った商品を販売予定。
えごまあんドーナツを開発した直売担当の水本さん。今後もえごまを使った商品を販売予定。

プロフィール

清凉義昭さん

清凉義昭さん
せいりょう・よしあき/「JAあおば えごま・ごま生産部会」部会長。あおば管内の担い手農業者として杉原地区にて農業を営む。平成26年より、あおば農業協同組合役員へ就任。6年間務める。平成28年に「えごま研究会」発足、会員に。えごま研究会員として、えごまの試験栽培を開始。平成30年「JAあおば えごま・ごま生産部会」設立時の役員を経て、令和元年より、部会長に就任。夫婦仲良く「えごま・ごま」の栽培を行う。

鈴木伸幸さん

松田雄二さん
まつだ・ゆうじ/「JAあおば」営農経済部営農指導課係長(担い手育成担当)。平成24年より「あおばの里みのり館」担当。えごま等の販売に関わる。平成28年より営農経済部営農指導課へ。えごま研究会発足時に事務局として、試験栽培、作業の機械化に向けて生産に関わる。平成30年「JAあおば えごま・ごま生産部会」設立、事務局。