富山市えごま6次産業化推進グループの人々を紹介!

話がある、環となる、輪になる。富山えごまの“wa”

vol.4 株式会社広貫堂 リテール事業部部長 鈴木 伸幸さん

富山えごまの商品開発で、
多くの人においしさと健康を届ける「広貫堂」

健康のまち・富山といえば「えごま」
そんなイメージを広めていきたい。


熱い思いを胸に抱き、富山えごまの商品開発に力を注いでいるのが、株式会社広貫堂のリテール事業部部長を務める鈴木伸幸さんです。同社は、富山売薬を代表する老舗の製薬メーカーであり、医薬品の製造・販売を通じて健康産業に寄与することを目的に、えごま6次産業化プロジェクトに参画しました。「牛岳温泉植物工場」でのえごまの葉の栽培をサポートするとともに、同事業部ではえごまオイルを使った加工食品の開発に取り組み、これまでに「KOKANDO EGOMA +(コウカンドウ エゴマ プラス)」などを発売。その生みの親といえる鈴木さんに、開発までの過程や富山えごまの可能性、今後の展望などをお聞きしました。

何度も試作を重ねたえごまドレッシングを手に熱く語る鈴木さん。
何度も試作を重ねたえごまドレッシングを手に熱く語る鈴木さん。

商品開発の鍵は
ブレンドの黄金比

アレルギー疾患や生活習慣病の改善が期待できるオメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)を豊富に含む、えごまオイル。鈴木さんが、「広貫堂」のリテール事業部部長として、えごまオイルを使った加工食品の開発に取り組み始めたのは2016年のこと。最初にアイデアが浮かんだ商品は、「KOKANDO EGOMA +」のえごまドレッシングでした。

「一般的に「油は身体に良くない」というイメージがありますが、えごまオイルは摂取を推奨されている油なので、普段使いのできる商品を作りたいと思いました。そこで、日常的によく使われているドレッシングにしようと思ったんです。ドレッシングもノンオイルのものが売れていますが、えごまオイルを使ったドレッシングなら喜ばれるのではないかと思いまして」

実際に開発を進める中で鍵となったのが、エゴマの効能を研究する富山大学とイタリア食科学大学の共同研究により導き出されたえごまオイルとオリーブオイルの「3:7」の黄金比でした。

「えごまオイルは身体にいいけれど、味覚的にクセがあり、熱に弱いという側面があります。その弱点を解消するために目をつけたのが、イタリア産オリーブオイルでした。オリーブオイルも身体に良く、風味もいいことから、えごまオイルと混ぜようという発想になったんです。単に混ぜるのではなく、えごまオイルの効果を担保しながら、味覚的にも美味しくなるようブレンドしなければなりません。導き出された答えが、えごまオイルとオリーブオイルは3:7。その配合を軸に商品開発を進めていきました」

3:7の配合をベースに、ブレンドオイルと並行してドレッシングも誕生。その後、えごまの葉と種を使った「えごまジェノベーゼ」、イタリアシチリア産の岩塩にえごまの種の搾油粕やバジル、パセリを加えた「えごまハーブソルト」が生まれ、それらを「KOKANDO EGOMA +」シリーズとして、2018年6月15日に発売しました。

KOKANDO EGOMA+シリーズの原点「3:7」の黄金比でつくったブレンドオイル。
KOKANDO EGOMA+シリーズの原点「3:7」の黄金比でつくったブレンドオイル。

県内の製造会社とともに
新しい味をつくる

当時の開発メンバーは3〜4人。この人数で新たなものを生み出すことは容易ではありません。特に大変だったのは、ドレッシングの製造でした。

「製薬メーカーは、食品を作ることができません。ですから、県内の企業をまわって作ってくれるところを探しましたが、油を使って食品を作っているメーカーはなかなかないんです。しかも、手作業での製造を求めていましたから。結果的には県内で協力してくれる会社を見つけることができました。これからの6次産業化推進のためにもより多くの製造会社に参加してもらえたらいいなと思っています」

ドレッシングの商品コンセプトや原料の比率・調合などは、イタリアンシェフの指導を受けて考案しました。製造会社で試作を始めた後、壁にぶち当たったのは、仕上がりの味だったそうです。

「最初は、とにかく健康重視で、オイルや食材の味を生かすことばかりを考えていましたが、試作をするうちにより美味しさを求めるようになっていきました。食に精通した製造元の方々からのアドバイスも取り入れて、みんなで一緒に考え、何度も試行錯誤を繰り返した結果、醤油などの旨味成分を入れることで美味しく仕上げることができたんです」

多くの方々の協力を得て、健康と美味しさを兼ね備えたドレッシングが誕生。肉料理におすすめの「ねぎ・りんご・ブラックペッパー」、魚料理にぴったりの「梅肉・大根」、いろいろなサラダに合う「ゆず・たまねぎ」と、多彩な味わいも魅力です。全種類揃えれば、毎日の食卓がより楽しいものになりそうですね。

KOKANDO EGOMA+シリーズ。
KOKANDO EGOMA+シリーズ。

売薬富山を代表する企業人として、
えごまの元気も広くお届け

CiC1階の「癒楽甘 春々堂」。店頭に広貫堂の薬とともに、えごま関連商品が並びます。
CiC1階の「癒楽甘 春々堂」。店頭に広貫堂の薬とともに、えごま関連商品が並びます。

「KOKANDO EGOMA +」シリーズは、富山駅前 CiC ビル1階「薬膳カフェ春々堂」をはじめとする直営店や通信販売をメインに、県内や市内で開催されるイベントなどでも販売しています。つい手に取りたくなる、ついクリックしたくなるオシャレなパッケージは、同社女性スタッフが手掛けたもの。α–リノレン酸を豊富に含む中身はもちろんのこと、「見せる」ことを意識したデザインはお土産や贈り物としても喜ばれそうです。

「一番人気が高いのは、えごまゴールドブレンドオイルです。馴染みの深いオリーブオイルとブレンドしているので、使いやすそうと思って買われる人が多いですね。リピーターも増えているんですよ」

現在の全ラインナップには、「KOKANDO EGOMA +」だけでなく、えごま油100%で作られた健康食品「ソフトカプセル」もあります。いつでもどこでも気軽に摂取できるところも魅力。通信販売だけでなく、家庭配置薬の仕組みに合わせて多くの人に届けられているところに、売薬業者によって設立された同社ならではの歴史がうかがえます。

「より多くの方々にえごまの良さを知ってもらうために、スーパーマーケットのような多くの人の目につくところに並べられるものを作りたいですね。そのためには、時代のニーズを掘り起こしながら、それに適した価格帯を設定し、多くの人の心を満たすような商品を作らなければなりません。さらに、富山売薬による富山に対する健康的な印象を生かして、「富山といえば、えごま」というイメージを広めていけたらいいなと思っています」

医薬品だけでなく、食品を通して、多くの人に健康を届ける広貫堂。鈴木さんが次に生み出す、えごまの新しい形は何なのか。今後も目が離せません。

プロフィール

鈴木伸幸さん

鈴木伸幸さん
すずき・のぶゆき/株式会社「広貫堂」リテール事業部部長。同社東京支店で、営業担当を経て、富山本社にて健康食品の商品開発に携わることからスタートし、勤続25年。「やくぜんカレー」「富山ブラックカレー」などの商品開発をはじめ、レストランやコンビニエンスストア、広貫堂資料館の運営にも携わっている。