富山市えごま6次産業化推進グループの人々を紹介!

話がある、環となる、輪になる。富山えごまの“wa”

vol.13 「大野菓子舗」代表 大野 等さん

えごまの栄養と食感を生かして、
安心できる美味しさを届ける、
菓子職人。

自分が信用できるもの、
納得できるものしか使いたくない。


1930(昭和10)年に創業した「大野菓子舗」の3代目店主・大野等さんは、富山えごまの初期段階に、その素材に興味を持ち、お菓子づくりに生かしてきました。今もその姿勢は変わりません。人々の間で「えごまの入ったお菓子を手に入れられるお店」という認識が少しずつ広まり、そのお菓子を目当てに訪れるお客さんが数多くいます。「お菓子に入れる素材は、自分が信用できるもの、納得したものしか使っていません」と話す大野さんに、えごまとの出会いや、それを使ったお菓子の特徴、えごまの魅力などについてお聞きしました。

富山えごまが始動し始めた頃、
いち早く商品に導入

富山市荒川にある「大野菓子舗」は、1930(昭和10)年に大野さんの祖父が隣町の荒川東部で煎餅屋を開業し、1962(昭和37)年にお父様が現在地で和洋菓子店として営業を始めました。3代目となる大野さんは短大卒業後、三重県の和洋菓子店で住み込みをしながら修業を積んだ後にUターン。富山県内の和洋菓子店や洋菓子とパンの店で修業を重ね、20代半ばで家業を継ぎました。

「お客様から『えごまの入ったお菓子はどれですか?』と聞かれることが一番多いんですよ」と笑顔で話す大野さん。店頭には多彩な和洋菓子が並んでいますが、「富山米やくぜんシューラスク」「純米ロールえごま」「酒粕(さけかす)エゴマ・ガトーショコラ」の3品が、富山えごまを使用したお菓子です。大野さんがえごまに興味を持ったのは、富山市がえごまに着目した頃と同じ時期でした。

「野菜ソムリエ上級プロの田中美弥さんが、えごまの試験栽培をするという新聞記事を見て富山の新しい素材に興味を持ったのが、えごまとの初めての出会いです。田中さんとつながりのある友人を介してコンタクトを取り、彼女の紹介でえごまを入手しました。その後は、JAあおばさんからも入手していましたね」

えごまとの出会いを懐かしむ大野さん。
えごまとの出会いを懐かしむ大野さん。

田中美弥さんが、富山大学人間発達科学部の附属農場で、富山大学・人間発達科学部の高橋満彦教授や、農場職員の増山照夫さん、そして農場の人たちとともに富山えごまの試験栽培に力を注ぎ始めたのは2009年。その頃、大野さんが、えごまの実を使って作ったのが「富山米やくぜんシューラスク」です。富山県産米粉でできたシュークリームの生地に、煎ったえごまの実をたっぷり練り込んでから焼き、それにバターを塗りグラニュー糖をまぶして再度焼き上げたお菓子です。その発想の源は、以前からお子さんのために作っていたお菓子でした。

シュークリームの生地に、煎ったえごまの実をたっぷり練りこんだ「富山米やくぜんシューラスク」
シュークリームの生地に、煎ったえごまの実をたっぷり練りこんだ「富山米やくぜんシューラスク」

「小麦粉で作ったシュークリームは、焼き上げる際にたまに失敗するんです。それを冷凍庫にストックし、時折バターを塗りグラニュー糖をまぶして焼き上げ、子どものおやつにしていました。友達にもあげたらすごく喜んでくれたことがきっかけで、商品化を考えるようになったんです。そんな時に、えごまの実のプチプチとした食感がラスクに合うと思ったことが、富山米やくぜんシューラスクの誕生につながりました。生地は小麦粉ではなく、富山県産米粉で作るために、米粉のシュークリームの焼き方を身につけましたね」

えごまパウダーの活用で、
食品ロスの削減にも貢献

えごまの実は、搾油後に細かく粉砕することで、えごまパウダーに生まれ変わります。大野さんが次に「純米ロール・えごま」を作ることになったのは、富山市環境政策課からの「えごまパウダーのサンプルをお菓子づくりに使ってみませんか」という案内がきっかけでした。

「健菜堂さんからえごまパウダーのサンプルを送っていただきました。それを富山県産コシヒカリで作った米粉ロールの生地に入れ、配合の異なるものを何パターンか作りました。『越中とやま食の王国』で行われた米粉製品のPR販売に参加し、富山えごまのアピールもしたんです」

その「純米ロール・えごま」が、全国のさまざまな地域の食品の安定的な発展を目的とした「優良ふるさと食品中央コンクール」を受賞したことについては、「えごまを使ったことが高く評価されたのでしょう」と微笑む大野さん。えごまパウダーの独特の香りと、えごまの実のプチプチとした食感が楽しめ、クセになる美味しさです。

えごまパウダーを米粉ロールの生地に入れた「純米ロール・えごま」
えごまパウダーを米粉ロールの生地に入れた「純米ロール・えごま」

3番目に手がけたえごまのお菓子は、「酒粕(さけかす)エゴマ・ガトーショコラ」。これは富山県内の6〜7店舗の和洋菓子店が、酒粕(さけかす)を使ったお菓子づくりに取り組むという試みから生まれたもので、『越中とやま食の王国』の米粉商品コンテンツに入選しました。

「小麦粉を使わず、富山県産コシヒカリの米粉を使った生地にえごまパウダーを練り込み、アクセントとしてえごまの実を上に載せました。また、南砺市の成政酒造さんから提供いただいた酒粕(さけかす)は、ガトーショコラの旨味として効いています」

酒粕との相性が抜群な「酒粕エゴマ・ガトーショコラ」
酒粕との相性が抜群な「酒粕エゴマ・ガトーショコラ」

えごまパウダーを活用することは、えごまの実を余すことなく使用することになります。また、お酒を搾る際に発生する酒粕(さけかす)を使用することも、食品ロスの削減につながっています。お菓子づくりを通して、SDGsにも寄与している大野さん。令和4年度には、そうした取り組みが高く評価され、富山県食品ロス・食品廃棄物削減推進県民会議から表彰されました。

身体にいいから、
自信を持って提供できる

「自分が信用できないもの、自分が食べたくないものはなるべく使わない」。これが、大野さんのお菓子づくりの信条です。

「例えば、トレハロースは添加物扱いになっていますが、その製造会社の方から話をお聞きし納得したうえで使っています。また、水と油を混合させるための乳化剤は、大豆由来のものを使っています。添加物をゼロにするのは困難ですが、自分が納得したものしか使っていません」

和菓子から洋菓子まで、たくさんの機械や器具が並ぶ作業場
和菓子から洋菓子まで、たくさんの機械や器具が並ぶ作業場

「富山米やくぜんシューラスク」「純米ロールえごま」「酒粕(さけかす)エゴマ・ガトーショコラ」に入っているえごまの実には、アレルギー疾患や生活習慣病の改善が期待できるオメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)が豊富に含まれています。その必須脂肪酸は体内では作ることができません。

「えごまは、それを使うことで身体にいい商品であることをお伝えできるところが、大きな魅力だと思います。最初の頃は新しくてユニークな素材として捉えていましたが、商品として扱うからにはお客様に効能などをきちんと説明しなければいけません。扱いながら知識を得ていきました」

自身の信条に基づいて素材を選び抜くことで、お客様に美味しさと健康を届け続けている大野さん。いずれの商品も、富山市が健康に良いと評価した料理やお菓子などを新たな観光資源とする「富山やくぜん」に認定されています。

「えごまの実は、プチプチとした食感も魅力。既存の商品にプラスすることで変化をつけられるため、商品のバリエーションを増やすのに最適です。今、興味を持っているのは、えごまオイルを搾った後の実。価格もリーズナブルなんですよ。これからは、その新たな使い道を模索していきたいと思っています」

独自のアイデアや技術から、健康的で安心感のある新しいえごまのお菓子が生み出されていくかもしれません。

プロフィール

大野等さん

大野等さん
おおの・ひとし/「大野菓子舗」の代表。
20代半ばで家業を継ぎ、既存商品の改良などを重ねてきた。2009年頃に富山えごまを知ったことを機に、お菓子づくりに導入。保育所へアレルギーに配慮した誕生日ケーキを提供することも。
県立雄峰高校専攻科 調理師養成課程 非常勤講師(和菓子)。公益社団法人日本食品衛生協会 食品衛生指導員。富山市新庄校下民生委員児童委員協議会の主任児童委員。